Nods to Mods インタビュー:Harmony

投稿者: Joshua Boyle

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『DOOM』を新たな角度から掘り下げる、Nods to Modsへようこそ。コミュニティクリエイターたちとともに、その制作過程を詳しく見ていきましょう! MOD制作者のThomas van der Veldenが早くも再登場! 今回はスペシャルな内容をお届けします…

長年のアドオン・ファンが待ち望んでいるのは、最高の武器や敵が配された素晴らしいステージだけではありません。彼らが期待しているのは、MOD界でも特に大きなプロジェクトであるトータルコンバージョン ・アドオンです!

Harmonyは再リリース版の『DOOM』および『DOOM II』用に作られたトータルコンバージョン・アドオンです。13ステージから成るこのアドオンでは、新しいゲーム内武器、テクスチャ、敵、音楽、効果音を無料でお楽しみいただけます!

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見逃した方のために – 最近追加された32ステージのアドオン「Revolution!」に関するThomasのインタビューもこちらでご覧いただけます。その他のトータルコンバージョン・アドオンについては、古代スカンジナビア文化にインスパイアされた32ステージのアドオン「REKKR」の制作者Matthew “Revae” Littleに迫ったこちらの記事をご覧ください。

SLAYERS CLUB:トータルコンバージョン・アドオンの制作には非常に大きな野心と努力が求められます。「Harmony」をトータルコンバージョンにしようと思ったきっかけは何だったのですか?

THOMAS VAN DER VELDEN :「Harmony」は元々、少数のカスタムテクスチャを含む『DOOM (1993)』用のマップパックとしてスタートしました。ですが制作を進めるうちにテクスチャがどんどん増え、もはや『DOOM』の設定とかけ離れた、独自の世界観を持ち始めていました。プロジェクトがより野心的なものになった結果、思い切って新しいモンスターも作ることにしました。そして最終的には、すべてのグラフィックと音声がオリジナルコンテンツと差し替えられました。

Harmony Screen in-body 2

「Harmony」の制作では『地球最後の男 オメガマン』や『続・猿の惑星』などのポストアポカリプスSF映画から影響を受けました。多くのシューター系ゲーム同様、ストーリーよりも世界観や雰囲気を重視しています。ゲームメカニクスに関しては、『DOOM (1993)』や『Duke Nukem 3D』といった90年代の3Dシューターからインスピレーションを得ました。

SC:コンパクトなステージデザインと見事な建築が好評を博していますが、そのインスピレーションはどこから得たんでしょうか? また各ステージのデザインにはどのようにアプローチしていますか?

TVDV :マップ制作は通常、「あれを『DOOM』のマップで作るにはどうしたらいいだろう?」と考えるところから始まります。私はオリジナルのDOOMエンジンの限界を押し広げて、爆発するクレートや撃って破壊できる消火器、自動販売機、移動する列車、疑似的な多層フロア効果といった要素を作りたいと思いました。マップ制作は性に合っているようです。アイデアが次々と浮かんで、大抵はそれを実現する方法を見つけられています。時にそれは、マップとテクスチャ(とDeHackEdエディター)が組み合わさったパズルのようです。パズルを解くことができれば、私のプロジェクトでしか存在し得ないものを作り出せたのだと実感できます。私にとって「Harmony」は、ただのゲームではないインタラクティブなアートワークです。これによって創造的なマインドセットに飛び込むことができます。

Harmony Screen in-body 3

マップを作るには新しいテクスチャが必要でした。コンクリートの壁、岩、巨大な菌類、車など、多種多様な素材のテクスチャを何百種類も用意するのは楽しかったです。『DOOM』との差別化のため、「Harmony」のための特製カラーパレットも用意しました。そのおかげでポストアポカリプス的でサイケデリックな独特のビジュアルに仕上がったと思います。一部の色は暗い場所でも明るさが維持されます。これを使って光る目やネオンライトを表現しました。

2022年には新ステージを2つ作っています(12、13)。以前のプロジェクトのリソースも活用し、すべての要素をスタイルとストーリーにフィットさせました。「Harmony」は今や、アクションと探索をたっぷり楽しめる13マップの冒険となっています。新マップの登場により、冒険は壮大なフィナーレを迎えます。

Harmony Screen in-body 4

**SC:このプロジェクトが兄弟のコラボレーション作だというのは本当ですか? もしそうなら、どんな連携が行えましたか? Oasisのギャラガー兄弟のような感じ、あるいはRadioheadのグリーンウッド兄弟のような感じでしたか?

TVDV :MIDI音楽しか聴かないのでその人たちのことはわかりませんが… 「Harmony」では私が何もかもを自分でやりたがっていましたね。プレイテスト中、ある画面に対してRoland(別名「space is green」)が迫力が足りないと言ったことがありました。それは確かにそのとおりだと思い、インターミッションの絵と終了画面は彼に作ってもらいました。

それらはステージ外の画面なので、他の部分とスタイルが違っても構わなかったんです。おかげでゲームのビジュアルがより洗練され、リッチな感触になりました。それだけじゃなく、自分の作品に触発されて別のアーティストがアートワークを作るというのはいいものですね。

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SC:Nods to Modsのインタビューを何年も続けてわかったのが、『DOOM』のアドオン制作者として1つの大きな到達点と言えることに、Jimmy Paddockとのコラボレーションがある点です。「Harmony」もその例に含まれますが、コラボレーションはどのように実現したのでしょうか?

TVDV :「Harmony」は元々、2009年にZDoomエンジン用にリリースされたものです。それを気に入ったJamesがMIDIサウンドトラックを作ってくれました。素晴らしい才能の持ち主が、自分のプロジェクトのために時間を費やしてくれたというのは最高の称賛です。

そして2022年の「Harmony」は再リリース版の『DOOM (1993)』と『DOOM II』に対応し、彼が作ったMIDI楽曲も当然使われています。このバージョンでは2つの新マップが追加されており、そのための新曲もJamesが作ってくれました。

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SC:素晴らしい新武器や敵はどのようにして作ったのでしょうか?

TVDV :敵キャラクターのスプライト作りは、トータルコンバージョンの一番難しい部分かもしれません。スプライトはさまざまなポーズやアングルを描いた一貫性のある多数のフレームで構成されます。「Harmony」では粘土製のモデルを写真に撮ってスプライトを作成しました。オリジナル版『DOOM』で用いられたスプライト作成法の低予算版といった感じですね。

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当時は本当にお金がなかったのですが、時間と創造性は充分ありました。そこで私は粘土でモデルを作り、色も塗りました。鉄線の骨組みと間接を使って、さまざまなポーズを取れるようにしたモデルです。それを(借り物の)デジタルカメラで撮影し、コンピューター上で編集しました。

Harmony Enemy sketches in-body 1

背景をデジタル処理で取り除くのが一番大変でした。自動的に背景を消すソフトウェアもありましたが、それでは境界線をクリアにできませんでした。ゲームではスプライトを間近に見ることになるため、処理の甘いピクセルは目立ってしまいます。質の高い結果を得るためには、手動でエッジを取り除くしかありませんでした。600枚以上の画像があったため、この作業は膨大 でした。そのうえで間接部分を補い、目を光らせ、フラッシュ効果などを加える仕上げ作業も必要でした。

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とても大変な作業でしたし、始めた時は上手くいくかもわかりませんでした。こんな方法でスプライトを作っているMOD制作者は他にいないでしょうね。デジタル化された粘土モデル(Beastling)が初めて画面内を歩いた時のことは覚えています。素晴らしかったですね! 自分の作ったものが“生きて”ゲーム内に現れ、インタラクトできるんです。あの感動は制作を続けるモチベーションにもなりました。

Harmony Sprites in-body 1

オリジナルの粘土モデルの中には、2009年版のゲームで使用しなかったものが1つあります。それは10年以上箱にしまわれていたのですが、ついに活躍の機会がやって来ました! マップ12と13に、飛行タイプの新種敵キャラクター「Aerosol」が登場します。

武器のグラフィックにはシンプルな3Dモデルを使い、その上にデジタルでテクスチャやディテールを描き込みました。2009年版のDeHackEdは、2022年バージョンで多くの問題を引き起こしたため、いくつかの要素はアップデートと差し替えを余儀なくされました。中でも顕著なのは武器です。

Harmony Weapon in-body 1

使用したエディターはすべて無料のものです。挙げきれないほどたくさんあるのですが、特に重要なのは マッピング用のDoombuilder、グラフィック用のGIMP、リソースのインポートを行うXWEとSLADE、DeHackEdの代わりとなるWhackedです。

SC:この大きなMegawadの完成までにどれくらいの時間がかかりましたか?

TVDV :「Harmony」は元々、ZDoomエンジン用に2009年にリリースされました。これは空き時間を使って2002年からずっと制作していたものです。完成までには膨大な時間が掛かりました。私にとっては大規模な芸術的趣味のようなもので、ゲームアートやデザインについてたくさん学びました。『DOOM』コミュニティの内外で好意的に評価され、2009年にCacowardを受賞しました。

2021~2022年には『DOOM (1993)』と『DOOM II』の再リリースに対応したバージョンを制作したのですが、素材の一部はもう20年前のものなのだと気づかされました!

Harmony Screen in-body 8

SC:トータルコンバージョン・アドオンを制作している『DOOM』コミュニティで、一番好きなMOD制作者、あるいはMOD制作チームは? また、その中で一番のお気に入り作品は?

TVDV :Batman TC、Aliens TC、DelaweareにはRevolution!の時の記事で触れましたね。彼らは『DOOM』のMOD制作の可能性を大きく押し広げてくれました。『DOOM』コミュニティは常に創造性とポジティブさにあふれています。数十年の時を経ても活気は衰えず、新たな機能や技や可能性が見出され、発明され続けています。革新的なものが今でも次々と生まれているのです!

Harmony Screen in-body 9

SC:他に謝意を述べたい相手は? 今が絶好の機会ですよ…

TVDV :再びのインタビューをありがとうございます! 「Harmony」の公式リリースを可能にしてくれたKevin CloudとMike Rubits、そしてid Softwareの方々に感謝します。皆さんにはとても助けられました。id Softwareと一緒に取り組めたことは忘れがたい経験になりました。

私の窮地を救い、効果音を提供してくれたChad Mossholderにも感謝します。そして「Harmony」の制作に協力してくれた「space is green」とJames Paddockにも感謝します。土壇場でDeHackEdの修正をしてくれたXaserにも感謝します! そして努力を惜しまずエディターを作った皆さん。あなた方なしにはMOD制作は不可能でした! 私の他のアートワークについてはwww.Rabotik.comをご覧ください。

素晴らしい回答をしてくれたThomasに改めて感謝いたします! 再リリース版の『DOOM (1993)』と『DOOM II』をお持ちの方は、ゲーム内のアドオンメニューから「Harmony」をダウンロードできますので、ぜひお楽しみください!

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