Nods to Mods インタビュー: 『Quake』用アドオン「Rubicon 2」

投稿者: Joshua Boyle

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Quake版の「Nods to Mods」へようこそ。この企画では、コミュニティのクリエーターから開発秘話を伺います。今回は『Quake』新版向けにリリースされた素晴らしい無料Modとアドオンの組み合わせである、「Rubicon 2」を取り上げます! 「Rubicon 2」は最初は2011年にコミュニティハブでリリースされており、3つの巨大なシングルプレイヤー用ステージ(それとスタートマップ)、新しい敵やサウンド、テクスチャ、モデル、ハザードなどが含まれています!

Nods to Modsに初登場となる、「Rubicon 2」を共同制作したJohn Fitzgibbonsさんをご紹介します! 『Quake』シーンではお馴染みで、Nods 2 ModsのベテランかつMachineGamesのシニア・レベルデザイナーであるChristian GrawertさんがこのMod、「Rubicon 2」の共同制作者となっています。

これまでにもChristianさんの素敵な作品をNods to Modsで紹介させていただいていますので、まだご覧になっていない方はぜひHoneyTerraのインタビューをご覧ください。今回はJohnさんにお話を聞いていきます。

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Slayers Club: 今回はインタビューを受けていただきありがとうございます! まずは読者向けに自己紹介をお願いします。

John Fitzgibbons: 私はJohn Fitzgibbonsです。色々なオンラインコミュニティではmetlslimeとして知られています。私はゲーム業界でレベルデザイナーとして20年ほど働いており、数多くのゲームに携わってきました。ほとんどはFPSかTPSですが、MMORPGやモバイルのカジュアルゲームにも携わったことがあります。『Quake』コミュニティ内では『Quake』と『Quake 2』向けのステージやテクスチャ、ツールを作成していて、レベルデザインフォーラムのFunc_Msgboardを立ち上げ、Quakeエンジンの移植であるFitzquakeを作成しました。

SC: 『Quake』のMODとステージ制作を始めてからどれくらいになりますか?

JF: 現在は趣味の活動はそれほど行っていませんが、1997年以来15年ほど続けていて、2011年に「Rubicon 2」をリリースしたところでやめました。1996年のクリスマスプレゼントで『Quake』をもらい、その後、1ヵ月もしないうちにオンラインでステージをダウンロードできることを知り、レベルエディターを手に入れて自分でステージを作れることを知りました。

最初はとても古い「Thred」エディターを使っていましたが、テクスチャを調整することができないなど、大きく不便な点がいくつかありました。初めてリリースしたステージは「The Crawling Chaos」で、特別な調整が必要ないテクスチャのみを使用していることに気付くかもしれません。ボタンのテクスチャなど、調整が必要なものも少しあり、コンパイルする前にテキストエディターで手動で調整する必要がありました。

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SC: あなたは『Quake』コミュニティ内で「Deadliest Mapper Alive」(史上最凶のマッパー)と呼ばれています。なぜそのような恐ろしい名前で呼ばれるようになったのですか?

JF: これは自分で(半分皮肉で)付けた称号です。就職のためにオンラインポートフォリオを作成するときに、自分を宣伝するのがいいと思ったんです。この名前は1980年代の古い広告を真似たものです。漫画雑誌や忍者雑誌の裏表紙に最強の格闘術を教えてくれる「史上最凶の男」が通販冊子を送ってくれるという広告がよくあったんです。

SC: Christianさんとドリームチームを結成することになったきっかけはなんでしょう? どのような経緯があったのですか?

JF: 私たちはどちらも古い『Quake』のメッセージボードであるQMapのメンバーで、当時、Christianはすでに(czg07として)「Insomnia」などの有名なマップをリリースしていたんです。私は過去にリリースしたものよりも大きなModを作りたいと考えていて、他のレベルデザイナーと協力すれば速くできるだろうと思ったんです。そこでczgに頼んだら、どうしてか承諾してくれたんです。

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SC: この素晴らしい3つのステージからなるアドオンとModの主なインスピレーションはなんですか?

JF: 主となるひとつのインスピレーションがあったわけではありません。もちろん、オリジナルの「Rubicon」と同じ、SF/インダストリアルをテーマにした何かを作りたいと思っていました。ポップカルチャーで影響を受けたのは『エイリアン』や『ブレードランナー』、『Akira』、ゲームとしては『スーパーメトロイド』、『ファイナルファンタジーVII』、『スーパーR-Type』などです。もちろん、『Quake 2』からも影響を受けています。また、『Planetfall』や『ゾーク』などのゲームからも参考にした部分があります。

SC: 「Rubicon 2」とオリジナルの「Rubicon」(最初のリリースは'98年)は、ストーリーや規模的にどのようにつながっていますか? 自分の過去の作品の続編を作るのはどういう気分ですか?

JF: アートスタイルとゲームプレイのフォーカスにつながりがあります。アートスタイルはSF/インダストリアルで、少しレトロな雰囲気です。SFですが、すべてがラフでダーティーでダークな部分は完全に『Quake』です。

オリジナルの「Rubicon」のゲームプレイ面では、敵は軍隊のみでした。「Rubicon 2」は新たな敵が追加されていますが、すべては軍かSFの陣営に所属します。「Rubicon」中の多くの粗削りな要素は、続編では洗練されています。テクスチャは似ていますが高品質に塗り直されていて、オリジナルのカクカクしたハシゴはカスタマイズされたのラダーコードに置き換えられています。オリジナルの「Rubicon」のテクスチャはいまいちだと思っていたので、同じスタイルで新たに作成できるのは嬉しかったです。

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SC: この野心的なModとアドオンの組み合わせを作成するために使ったツールはなんですか?

JF: 『Quake』のModを作成するには、複数のツールやユーティリティーが必要になります。すべては思い出せませんが、QERadiant、Texmex、qME、milkshape、Pak Explorer、FrikQCC、SleepwalkRのマップコンバーター、aguirReのマップコンパイラー、SFXR、SoundForge、Paint Shop Pro、Photoshopなどを使いました。

SC: このModとアドオンの組み合わせ完成させるのに、二人でどれくらいの時間がかかりましたか?

JF: 「Rubicon 2」は構想からリリースまでに10年ほどかかっていますが、「Fitzquake」などの趣味のプロジェクトや『Quake』の他のステージ、『Cube』や『Sauerbraten』などの他のゲームのマップの作成などのために何度も中断しています。また、Christianも様々な時期に他のステージやプロジェクトを行っていました。

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SC: このアドオンに登場する新たな敵について教えてくだい。

JF: オリジナルの「Rubicon」に登場する敵は、グラント、エンフォーサー、犬など、軍隊のものだけでした。バラエティーに乏しく、これら3つはゲーム内でも最弱の敵だったことから、敵の強さにもほとんど変化がありませんでした。新たな敵を作成したのは、テーマを維持しながらバラエティーとチャレンジを増やすためでした。

ドレッドノートは火炎放射器を持ったエンフォーサーです。DPSが高いですが、遠距離攻撃はありません。ゲームプレイは『Quake 2』のバーザーカーのパターンを利用しました。離れていれば安全ですが、追いつめられると非常に危険です。

センチュリオンとネイルガン・エンフォーサーは空飛ぶ足場に乗っています。飛行する敵の多くはヒットボックスが小さくなっています。小さな空飛ぶロボットを狙撃するのは面白くないので、エンフォーサーやスクラッグのような大きなものを登場させたいと思っていました。これらは映画『マスターズ・オブ・ユニバース』の「エア・センチュリオン」からインスピレーションを受けています。

オートマトンは巨大なセキュリティロボットです。彼らは『Planetfall』が元ネタなので、「Floyd」というニックネームを付けていました。デザインは『スーパーメトロイド』のロボットを参考にしています。他の敵よりも大きくて遅く、死亡時に爆発するので油断できません。

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SC: 装甲タレットや恐ろしいガスを発生する蒸気ダクトなどの手際い要素から、新たなエリアに移動できるハシゴや主要なエリアへの入口を閉鎖する色分けされたレーザーなどの興味深い移動オプションなど、このModには斬新なゲームプレイオブジェクトが登場しています。これらはどうやって思いついたのですか?

JF: 随分長い時間がかかったので、これらのアイデアがどこから来たのかはすべては思い出せません。ハシゴはオリジナルの「Rubicon」にすでにありましたが、カクカクしていました(スーパーステップの階段トリック)。続編では、スムーズに昇れるようにしたいと思っていました。

レーザーは『Quake 2』の影響です。これらを追加する前は、ミッションパックの粒子力場のようなものを使っていましたが、それでは満足できなかったんです。1つのボタンでステージ内の異なる部分の複数の障壁をオフにすることができるし、プレイヤーがそれを理解できるので、色分けされたレーザーはいいメカニズムだと思ったんです。タレットは何度も改善を行いましたが、元々はオリジナルの『Quake』のレーザーを発射するトラップのようなものでしたが、その後、開発が進むにつれて、プレイヤーを追跡するものになり、停止するために特別なアクションが必要なものになりました。

SC: 『Quake』コミュニティで好きなMOD制作者またはMOD制作チーム、そして彼らが制作したお気に入りのMODを教えてください。

JF: ひとりやひとつに絞ることはできません。『Quake』コミュニティには才能ある人々があふれていて、その長い歴史のなかで様々な人々が現れました。私のお気に入りのひとつはKellと「Quoth」のチームです。「Quoth」は初期のModで、『Quake』にふさわしい一貫したビジョンを持っており、より大きな世界観を感じさせる細かなヒントがあちこちに用意されていました。同じ理由で、Sockと「Arcane Dimensions」のチームも好きです。このModは全体的にハイクオリティなアセットに置き換えられていて、敵の種類も豊富で、非常に考えられて良くできており、一貫性がありました。「Rubicon Rumble Pack」のHrimfaxi、ijed、mfxもです。このModは「Rubicon 2」のテーマとゲームプレイを元にして、それをさらにパワーアップさせています。

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SC: この機会に、他に感謝を伝えたい人はいますか?

JF: コミュニティ内ではレベルデザイナーとMOD製作者が注目されがちですが、ウェブサイトやフォーラム、ツール、エンジンなど、コミュニティの「インフラ」を支えてくれるすべての人々には本当に感謝しています。これらのおかげでコミュニティが存続し、進化を続けることができているんです。

Quaddictedの精神ですね。SleepwalkRはFunc_Msgboardを主催していて、「Fitzquake」のSDLの移植も作成しました。これが「Quakespasm」の原型になったんです(彼はTrenchBroomエディターも作成しています)。「Quakespasm」のチーム全員が、何年にも渡って、このプロジェクトを維持してくれているんです。AguirReはエンジンとコンパイルツールの作業を行ってくれています。Shamblerはずっと前から『Quake』のステージのチェックも行ってくれています。

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