製作秘話:『Quake™』の「Dawn of the Machine」
投稿者: Parker Wilhelm
『Quake™』の30周年を記念してリリースされるDawn of the Machineは、伝説のFPSタイトルの新エピソードで、id SoftwareとMachineGamesが共同で開発しています。時間をねじ曲げる19マップの新キャンペーン、新しいデスマッチマップ、新しいサウンドトラック、新しい秘密などが含まれています!
プロジェクトリードとして「Dawn of the Machine」の開発チームを率いたMachineGamesのリードレベルデザイナー、Andrew Yoderと一緒に新コンテンツの制作の舞台裏を覗きつつ、『Quake』の30周年を祝いましょう。
ひとつの終わりと新たなはじまり
MachineGamesには、1996年の発売以来ずっと『Quake』シリーズのレベルを作ってきたスタッフがいます。そして私も含め、割と最近『Quake』のレベルを作りはじめたスタッフもいます。そうしたスタッフで構成された“Quake Club”というチームがあります。私たちは共に2021年に「Dimension of the Machine」、2023年には「Call of the Machine」、そして今回「Dawn of the Machine」を作りました。
「Call of the Machine」の後には『インディ・ジョーンズ/大いなる円環™』およびDLCの『巨人の教団』の開発作業がありましたが、その後プリプロダクションの期間があったため、『Quake』の30周年を祝う新しい何かを作る良い機会だと考えました。
『インディ』の開発終盤、私はQuake Clubの次の活動についてMachineGamesのゲームディレクターJerk Gustafssonと話し合いを開始しました。
その時の話し合いから、私はJerkと3つの目標を決めました。
第1に、そしてもっとも重要な点ですが、今回のエピソードは『Quake』の30周年を祝うためのものです。初代『Quake』の精神を感じさせる体験を作ろうと考えました。つまりホラー! アクション! 狂気! 罠や怪物でいっぱいの古代遺跡を探索して、命からがら脱出するスリルです。
2番目の目標は、ベテランの『Quake』プレイヤーも驚くような新鮮な体験を届けることです。「Dimension of the Machine」で得た大きな教訓に「保守的になりすぎていた」というのがあります。プレイヤーは拡張コンテンツでは新しい武器、新しい敵を見たかったのです。それか最低でも拡張コンテンツからの武器や敵を見たかったのです。私たちは『Quake II』のエピソード「Call of the Machine」ではもっとうまくやれていましたが、さらにうまくやりたいと思いました。
3番目に、Quake Clubは昔から開発チームの学びの場であり、楽しむ場であるということです。現代の大作ゲーム開発は専門分化の傾向があります。ところが『Quake』では、MODツールの品質が高く、ゲームの素材が比較的シンプルであることから、開発メンバー全員が多少なりとも複数の工程をこなせます。ここでは“レベルデザイナー”、“環境アーティスト”、“戦闘デザイナー”、“スクリプター”といった専門的な役割で区別されません。各人の個人的な好みや知識があるだけです。
土台
「Call of the Machine」や「Dimension of the Machine」ではハブ構造を用いてエピソードをユニット単位に分割して、プレイヤーの進行状況をリセットしました。ですが私とJerkは、「Dawn of the Machine」では、進行状況が引き継がれる連続したエピソード構成にしようと思いました。これはスタッフ間の協力がさらに必要となる難しい選択でした。
『Quake』で表現できるテーマやアイデアについても、開発初期にいろいろと出されました。着想源の一つは、H・P・ラヴクラフトによる短編『ナイアーラソテップ』です。この作品では現実が崩壊して時間のない狂気のカオスへと変容していく様が一人称視点で描かれています。また、私個人はフィリップ・K・ディックの長編やトーマス・リゴッティの短編に影響を受けています。
これらの影響やアイデアが合体してひとつの土台ができあがりました。Rangerが幻想の領域にとらわれているというものです。外部の神々が私たちの世界をもてあそび、彼らの思うように世界を破損させ、飲み込んだり形作ったりしようとします。目で見えているものが信用できない世界でも、その幻想を破壊して外部の神々の企みを阻止したうえで脱出する道はあります。細部は開発メンバーがそれぞれのレベルを作る中で変わりましたが、“幻想の領域”というアイデアは土台として残りました。
独立性、フラット、カオス
Quake Clubは通常のゲーム開発というより、MOD制作に近い活動です。チーム構造はフラットで、上下関係も緩やかです。デザイナーは自らが作るレベルについてかなりの独立性と裁量を持っていて、そのデザイナーなりのテーマ、設定、ストーリーを考えることを許されています。私とJerkで初期の計画やテーマを設定していますが、チームメンバーのアイデアを受けて何度もエピソードの構成やストーリーを練り直しました。
ここでひとつの例として、天使の彫像を紹介しましょう。「The Matriarch of Decay」の初期バージョンでは、シニアレベルデザイナーのErik Hörnströmがレベルの各地に神殿を作り、それぞれの神殿に報酬と、その領域を治める女王に関するストーリーの断片を置いていました。
これらの神殿は当初シンプルなブロックで表現されていましたが、リード3DアーティストのPontus Wåhlinが天使のモデルを作って置き換えていきました。その天使のモデルが非常に良い出来だったため、他のデザイナーたちも採用してエピソードの全体で使用されるようになり、ストーリーやテーマとの関連が考えられるようになりました。ネタバレのためここで詳細は明かせませんが、こういったアイデアをうまくエピソードに導入して統一感を高めていったことで、「Dawn of the Machine」の完成度が高まりました。
もうひとつの例として、テレポートがあります。私がゲームプレイスクリプトに取り組んでいた際、他の『Quake』MODでも使用されたことがあるシームレスなテレポートを、本エピソードにも導入できないかと考えました。サンプルが完成してチームメンバーに見せ、それぞれのレベルで使用するかどうかは各デザイナーに任せたのです。すると、シニアテクニカルアーティストのTom Fritzsonがこのアイデアを限界まで突き詰めた「The Haunted Tower」を作ってくれました。それぞれのメンバーは独立していますが、フラットなチーム構造がもっともうまく機能するのは、お互いが助け合い、お互いの強みを生かせている時です。
その強みが通常の責任範囲の外にあることもあります。本エピソードの開発中、アドバンスドレベルデザイナーのChristian Plogforsが新しいサウンドトラックを作ると申し出ました。私は「挑戦してくれても問題ない」と伝えましたが、Christianはムードがあり、ダークでアンビエントなトラックを何曲も作ってきてくれました。この素晴らしいサウンドトラックのおかげで本エピソードは過去の拡張コンテンツと比べても独自の世界観を確立するのに成功しています。通常の役割を飛び出し、普段見ることができないスキルや情熱をプロジェクトに捧げてくれた彼のおかげで、本エピソードはさらに高品質なものになりました。
このような独立性はカオスをもたらすと思われるかもしれませんが… そのとおりです! 当初のプランでは、広大で相互につながるサンドボックス型のマップ群と、非線形世界の中で進行状況が引き継がれるゲームデザインを計画していました。しかし、しっかりとしたトップダウンの計画に従う必要のある一部のアイデアは、Quake Clubの開発スタイルには合っていませんでした。私たちはボトムアップのカオスの中で開発しているからです。こうしたアイデアの中には、ほんの少し手を加えるだけで実現できそうなものもありました。ですが、最高のアイデアは、チームで協力して素晴らしいものを作ろうとみんなで可能性を探っている過程でこそ生まれたのです!
『QUAKE』の30周年
「Dawn of the Machine」を開発するチャンスを得られたことは名誉なことで、『Quake』が築いてきた歴史のおかげで私たちの今があります。今回のアップデートにはMike Rubitsが加えた「id Vault」が含まれています。「id Vault」ではオリジナルの開発チームによる初期のゲームビルドやレベル、テクスチャ、モデルなどが見られ、ゲーム史におけるこの重要な作品のアーカイブとなるでしょう。
Quake Clubと私たちの作品は、Quakeコミュニティとid Softwareのメンバーの支えなしには存在し得ません。長年協力してくれているシニアプログラマーのMike Rubits、そしてリリースに向けた制作上の課題解決に協力してくれる、才能溢れるid Softwareのメンバーたちに対して、私はQuake Clubのメンバーと共に深く感謝申し上げます。彼らの協力がなければ「Dawn of the Machine」は実現しませんでした。
また、素晴らしいレベルエディターを作ってくれたKristian Duske、コンパイルツールのEric Wasylishen、30年にもおよぶ探求と革新をもたらしてくれたQuakeのMODシーンの皆さんにも感謝しています。
** 『Quake』、誕生日おめでとう! **
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「Dawn of the Machine」は、XBOX Series X|S、XBOX One、Microsoft PC Store、Game Pass、PC Game Pass、Steam、Nintendo Switch 2(後方互換性を利用)、Nintendo Switch、PlayStation®5、PlayStation®4版『Quake』でプレイできます。
